不飽和脂肪酸は酸化されやすい
以前、脂肪酸について触れましたが、もう少し詳しく見ていきましょう。
脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
飽和脂肪酸は、主に動物性の脂肪、牛、豚、鳥などの脂に多く含まれています。
ラードやバターなどがその代表で、常温では固まっているのが特徴です。
それに対して、不飽和脂肪酸の方は、植物性の油に多く含まれていて、常温では液状になっています。
天ぷら油やサラダ油がそうです。
魚の油はその中間ですが、不飽和脂肪酸を多く含んでいます。
一体、この飽和とか不飽和とはどういう意味なのでしょうか？
実は、これは大変重要な意味があります。
脂肪酸は炭素が数珠つなぎになっている細長い恰好をしているのですが、不飽和とはその数珠つなぎの中に、切れやすい部分を持っているという意味なのです。
ですから、反対に、飽和脂肪酸というのは切れやすいところがない、という脂肪酸です。
切れやすい、ということはべつな言い方をすると、酸化されやすいということです。
不飽和脂肪酸には、いろいろな種類があって、この切れやすいところが一か所しかないものから数か所持っているものまでたくさんの種類があります。
魚の油で、最近注目のドコサヘキサエン酸、略してDHAという脂肪酸は切れやすいところが六ケ所もある不飽和脂肪酸です。
切れやすいところがたくさんあれば、それだけ酸化されやすい脂肪酸ということになります。
生体膜は、この飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とをバランス良く配合しています。
その理由は、温度に対して飽和脂肪酸の固まりやすい性質と、不飽和脂肪酸の固まりにくい性質を持った二つの脂肪酸を巧みに利用して、ちょうど程よい硬さの膜になるように調整してあるのです。
どちらかに傾いても、膜の性質は柔らかすぎるか固すぎるかになってしまいます。
こうした生体膜の機能を一番いい状態で保つために、性質の違ういくつかの種類の脂肪酸を取り合わせているわけです。
当然、食品としてとる脂肪酸も、生体膜の性質を良い状態にするようにバランス良く食べておかなければならないということになります。
よく動物性の脂よりも植物性の油の方が健康に良いと考える方がありますが、これは必ずしも正しいとは言えません。
マウスの実験ですが、動物性の脂だけを配合した餌と、植物性の油だけを配合した餌で別々に飼うと、動物性の脂で飼ったほうが長生きしたというデータもあります。
これは、酸化しやすい不飽和脂肪酸が必要以上に多く取り入れられると、体の中の脂肪酸の組成がかわってしまって、酸化を防止する能力が追い付かなくなってしまうためだと考えられています。
顔のシミは活性酸素の跡
活性酸素は、様々なところを酸化してしまいます。
タンパク質が酸化すると性質が変わってしまったり、酵素が酸化すると失効してしまいます。
遺伝子のDNAが酸化されると、正確なコピーが出来ずに誤って情報を伝えてしまう事になります。
その中でも、酸化されやすい不飽和脂肪酸もエネルギーをつくるミトコンドリアの膜の材料になっていて、活性酸素が作用しやすいところですから、心配してしまうわけです。
この不飽和脂肪酸が酸化されると、「過酸化脂質」という物質が出来ます。
これもフリーラジカルの一つで、しかも連鎖的に近所隣を酸化してしまうという困った性質があります。
食品でも不飽和脂肪酸の多いものは、古くなるとこの過酸化脂質ができやすくなり、これを食べるとお腹を壊すといった毒性があります。
顔などにできるシミも、実はこの過酸化脂質の成れの果てなのです。
過酸化脂質は、連鎖的に被害者と加害者を作り出しますから、被害を最小限に止めるようこれを取り押さえなければなりません。
そこで、メラニンという色素が出てきて、この過酸化脂質の加害者づくりを止めさせます。
それが、シミです。
歳をとると増加することから、老化色素とかリポフスチンなどと言われています。
顔は日光の紫外線を浴びますので、特に老化色素のできやすいところで、よく目につきますが、この老化色素は顔だけではありません。
体中にできています。
心臓の筋肉の中にも、脳の細胞の中にも年を取るにしたがって増え続けます。
お肌のシミについてお話してきましたが、お肌の美容で気になるところは、シミだけではなく、皮膚のたるみやくすみも気にされているのではないでしょうか？
こうした、皮膚のたるみ、くすみの原因も紫外線で作られた活性酸素です。
この活性酸素の90パーセントが一重項酸素です。
これは、ヘモグロビン色素の分解室に紫外線が当たることで生じます。
残り10パーセントくらいがスーパーオキシドと考えられています。
スーパーオキシドは、その後、過酸化水素（オキシフル）に変わり、さらに分解されてもっとも酸化力が強いヒドロキシラジカルになります。
皮膚でも試験管の中でも、過酸化水素に紫外線が当たるとヒドロキシラジカルが出来ます。
これらの活性酸素が、コラーゲンを分解して皮膚を老化させるのです。
ところで、美白用ファンデーションに二酸化チタンが使われています。
この物質は、水分と光があると触媒となって水を分解してヒドロキシラジカルを作ります。
このヒドロキシラジカルが黒いメラニン沈着物を分解して美白効果を発揮しているのです。
活性酸素はご婦人の美容のためにも働くのです。