ビタミン以外の抗酸化食品(1)

新たな抗酸化物質

口から入るもので酸化を防止する代表的なものとして、ビタミンを中心に話を進めてきましたが、同じように口から入るもので酸化を防止する食品(抗酸化食品ということもあります)は、他にないものでしょうか?

 

たしかに、ビタミンEやビタミンCをはじめベータカロチン、ビタミンB₂などは、酸化を防止する機能が論理的にも説明ができ、また疫学的にも証明がされつつある信頼性の高い抗酸化物質ですが、その他にも状況証拠はあるものの、ハッキリとした効果となると今一歩といったものであれば、日常口にする商品の中にはたくさんあります。

たとえば、実験室の試験管の中では効果があると分かっても、実際にからだの中に入ってからも効果があるということが何かの形で実証されないと、そのものが「効果がある」ということはいえないのです。

以前にもお話したSODという活性酸素を消去する酵素などはその典型的な例で、人工的につくることは出来ても、口から入れると消化器系等の中で分解されてしまって、からだの中には取り込むことが出来ません。

ネズミやウサギなども実験動物としてよく使われますが、これも人間とは様々な面で違いがありますので、実験動物で効果があったからといって、必ずしも人間にも同じように効果があるとはかぎりません。

ですから、試験管の中でうまくいった、動物実験で成功したといっても、残念ながら直ちに人間の体の中で有効とは限らないのです。

しかし、人間は実験動物のように同じ環境で様々な実験をするわけにはいきません。

とくに、予防効果を知るためには何十年もかかりますので、同じ環境で多くの人を対象とする人体実験はほとんど不可能です。

そこで、状況証拠の段階ですが、これまでの研究の中から効果が分かっているものを集めて紹介してみましょう。

 

海の生物と酸化

地球上の酸素は、らん藻という海藻によって作り出されたといわれていますが、この海藻類には、不飽和脂肪酸が陸上の植物に比べてたくさん含まれています。

ですから、陸上の植物よりも酸化されやすいはずなのですが、たとえば、海苔とかわかめなどの海藻類は、古くなったからといって酸化してしまうということがありません。

このことは、以前から研究者の関心を引いているのですが、海草の中から特定の抗酸化物質は見つかっていません。

どうもいくつかの物質が集まって相乗的に抗酸化力を発揮しているのではないかと考えられています。

このほかにも、海の生物として貝類の抗酸化物質を調べた研究がありますが、ビタミンEの量はごく微量で、活性酸素の発生を食い止めるのは量的に無理のようで、やはり、別に抗酸化防止のシステムがある可能性が大きいようです。

その別の抗酸化物質として考えられるものとしては、クロロフィルに関連する化合物があげられています。

そして、そのもととなっているのは貝類自身で作り出すのではなく、海草で作られたものを貝類が食べた結果ではないかと考えられています。

このように、海の生物は陸上の動物とは違った抗酸化防止のシステムがあるようで、このクロロフィルの関連する化合物はビタミンEよりも高い抗酸化力を示すことが知られています。

生物が海から誕生したことを思い合わせると、海の生物の方が酸化に対する対策は一歩先を進んでいるのではないか、となかなか興味を惹かれる現象です。

しかし、残念ながらこれらの海藻や貝類などの酸化防止システムが、人間のそれにどのようにかかわりを持つことが出来るのかは、現在ではまだよくわかっていないので、今後の研究を待たなければなりません。

海藻類は日本人の多用する食品の一つですが、単純にこれらの海産物を食品としてとれば酸化防止の機能が強化されるかは目下のところ未知数です。