運動は必ずしも良いというわけではない
活性酸素が運動の量と密接な関係にあります。
身体を動かせば、エネルギーをたくさん消費するのは当たり前ですから、それにつれて酸素の消費量も増えて、活性酸素の発生する量もそれに比例して増加するという関係が成り立ちます。
激しい運動をすると、息が苦しくなるくらい酸素を大量に吸い込むわけで、活性sンその発生を促進していることに間違いありません。
一般的に女性の方が男性よりも長生きですが、これも女性の方が基礎代謝量、すなわち運動量で酸性より少ないためだという説もあります。
女性の方が男性よりも基礎代謝量で5~10パーセント少ないことが分かっているからです。
体育系の大学を出た人は、やはりスポーツを職業としている場合が多いようで、文系の大学を出た人よりも6歳強も短命だという調査があります。
ジョギングの提唱者であるアメリカのJ・フィックスが1990年にジョギング中に倒れて亡くなったのは、ずいぶんショッキングな事件でしたが、彼は16年間もジョギングを続け、亡くなった時は52歳だったようです。
このように丹念に運動と寿命の関係を調べていくと、どうも運動をする方に不利な事例が結構多くあるのも事実です。
それでは、健康のためには絶対に体を動かしてはいけないのかというと、決してそんなことはありません。
身体の方も運動によって生じた活性酸素を消去する能力を備えていますから、その能力の範囲の中ならば大丈夫というわけです。
当然、若い人と壮年期に入った人では、活性酸素を消去するキャパシティーに違いがありますし、若い時に体を鍛えた人の方が年を取ってから運動を始めた人よりもそのキャパシティーに余裕があるはずです。
栄養面では、活性酸素を消去する酸化防止システムを円滑に作れるように栄養に不足を起こさないようにする、活性酸素の攻撃目標をやたらと増やさないように過食をしない、ということでバランスの取れた食事をすることをお勧めしていますが、過度の運動によって活性酸素の大量発生を促進してしまっては、食事での努力が水泡に帰してしまう事にもなりかねません。
ですから、活性酸素の害を最小限に抑える対策としても、どのくらいの運動をすればいいかは大切な問題なのです。
若い時にスポーツをすることは、活性酸素の問題をよく理解したうえで、体を鍛えておくためには大切ですが、40歳を超えてからの運動には、活性酸素の消去能力に見合った運動量にするよう十分な配慮が必要です。
運動しないほうが長生き?
動物の世界でも、運動をさせた群れとさせない群れとの対比の実験が数多くありますが、そのいずれも運動をさせなかった群れの方に長生きの結果が上がります。
例えば、ハエを小さなかごの中で飼うと約40日ほど生きますが、広い部屋の中で自由に飛べるようにして飼うと半分以下の日数しか生きません。
小さなかごの中で飼う方が長生きだという、予想外の結果になるのです。
この結果を見ると、やはり、あまり動き回るのは必ずしも良いことではないようです。
また、疲労回復を図ろうとして酸素ボンベから酸素を吸うことがあるかもしれませんが、おれは過激な運動をしたのと同じことで、大変危険な習慣です。
ふつう1000日ぐらい生きるネズミを酸素100パーセントの中で飼うと、1週間で死んでしまいます。
これも、活性酸素の毒性を消去する限界を超えて酸素が供給されたためだろうと考えられています。
人間も含めて、動物は酸素が20.9パーセント含まれている空気の中で生きていけるように設計されているのですから、むやみに酸素を大量に吸ってはいけないのです。
運動も度を越えないように気を付けましょう。
でも、運動をしなければ太ってしまう、と考えられると思いますが、それは間違いです。
結論は食事をコントロールすればいいのです。
やはり、これもネズミによる実験の結果ですが、強制的に運動させたネズミの集団と、運動をさせないネズミの集団とでは、実は、強制的に運動をさせたネズミの集団の方が長生きします。
良く調べてみると、運動させないネズミの集団は暇なものですから、どんどん餌を食べてしまい、ぶくぶく太ってしまいました。
そのために短命だったのです。
そこで、運動をさせない集団でも、食事を制限する群れを作りました。
その結果は、食事制限・運動しない集団が一番長生きだった、ということでした。
ですから、運動をしないと太ってしまうという考えは当たらないのです。
さらに言えば、運動をして痩せようという試みは、成功の可能性が低いと思ったほうがよさそうです。
重要なことは、運動よりも食事のコントロールの方が優先されることを前提に、運動に見合った食事をするという事です。
一般に、食べて太るのは美食の結果です。
特に、脂肪の多い食事は肥満を助長済ます。
食事だけで体重をコントロールしようとすると、筋肉や骨など全体的にダメージを受けますから、その点、運動と食事の最適な組み合わせが必要になります。
そして、運動をする場合は、ビタミンC、ビタミンB₂、ベータカロチンといった抗酸化物質を事前に充分服用しておいて酸化防止力を高めておくことも考えたほうが良いでしょう。